危機管理って大事 その1

ジャニーズ問題。

ご当人たちには大変な事でしょうが、第三者の自分から見てると、いろいろと考えさせられる事があります。

 

まず、改めて危機管理って大事だなあって事。

ジャニーさんのそういう性癖の噂って、昔からかなりあったらしい。私もチラッと聞いたことがあるようなないような。そこまで印象に残ってないので、聞いた事があったとしても本気にしてなかったんだと思う。ただのゴシップだって。

でも事務所はそういう意識じゃダメだよね。みんなが単なるゴシップだとスルーしたとしても、中には真に受ける人もいるだろうし、後になって災いとなる事もある。今回のように。そういう噂が出てきたら、違うなら違うとちゃんとその時に言わないと。

 

※犯罪、違法行為に関する事は、法的にどう位置付けられてるかを基準に考えるべき、というのが私の基本的な考えなので、心証的には真っ黒でも法的には今のところシロのジャニーさんを犯罪者と断じる事を私はしません。

ジャニヲタ往生際悪いと決めつけるのは勝手ですが、私はジャニヲタと呼ばれる類の者ではありません。法治国家としての原理原則を出来るだけ守るべきと考えているだけです。

また、被害を訴えている方々の証言を疑うものでもありません。客観的な検証や調査が行われていない段階では、あったともなかったとも断定しないというのが基本的スタンスです。

事務所による事実認定は、裏付け調査無しで行われたものなので私の中では保留です。

そのあたりの事はこちらの記事に書いています。良ければご参照ください。

https://apocalyps.hatenablog.com/entry/2023/09/11/192402?_gl=1*197h3zy*_gcl_au*NzA5ODc2MTEyLjE2OTA2NDM5MTY.

 

 

とは言え、一度はきちんと反論した事はあったよう。今回の騒動が起きてからたびたび出る「昔の裁判で事実と証明されたよ」っていう話の「裁判」の事です。

 

調べてみたら、ジャニーズ事務所が文春を名誉毀損で訴えた民事裁判だった。

 

一審ではジャニーズ側の主張が認められて文春に880万円の賠償命令が出た。

二審では、被害証言には「真実相当性」がある、「セクハラ行為はあった」、そのため記事の中のセクハラ行為の部分は名誉毀損にあたらないと判断、賠償金が減額された。

ジャニーズ側はそれを不服として上告したが棄却され、二審の判決で確定した。

という流れだったようです。

 

更に深く調べてみた。

二審で文春側の主張が認められた背景。

被害少年たちの証言に対し、ジャニーさんは「彼らの証言を明確に嘘とは言い難い」と証言したらしい。これを聞いて文春側の弁護士は勝った!と思ったと言う。

その証言を聞いたら、私でも「やったんだな」と思う。少なくともなんらかの心当たりがあるから否定しきれなかったんだな、と。

では、なんで二審の判決を不服として上告したのか。

辻褄が合わない。

 

そこで、更に更に調べてみた。

二審の時、証言台に立ったジャニーさんに対して、文春側の弁護士が「あなたが彼らの証言を嘘だと言うと、少年たちが偽証罪に問われる事になりますが、それでいいんですか?」と執拗に繰り返したと言う。それで、ジャニーさんはどうしても「嘘だ」という一言が言えなかったのだと。これは、ジャニーズ側の弁護士の発言らしいので完全に信じていいのかはわからない。弁護士は依頼人の利益を守るものだから。ただ、そういう事があったのなら、明確に否定しなかったくせに判決を不服として上告した、というのはある程度辻褄が合う。

本当のところはどうかわからない。

でも本当だったらジャニーさんって愚かな人だと思う。裁判なんて、互いの主張をぶつけ合うところ。お互いに傷つけ合わざるを得ない事くらい最初からわかってたはず。もしそこまでの覚悟がなかったのなら、最初から訴訟など起こさない事だ。

本当に加害行為をやってたとしても、やってないのに少年たちを庇ったのだとしても、どちらにしても愚かな人だ。結局これだけ多くの人を傷つける結果になってるんだから。

 

 

 

 

ジャニーズ側の主張が全て認められたわけではないけれど、文春の記事の一部に名誉毀損があったと認められたので文春に賠償が命じられた、つまり全体としてはジャニーズ側の勝訴で終わった裁判、というのが事実。

 

昔の裁判でジャニー喜多川の性加害が認定された、は大きな意味では合ってるけど、厳密には違う。

民事裁判での認定と刑事裁判での認定は、天と地ほどの違いがある。その事をまずしっかり認識する必要があります。

 

真実相当性とはなんぞや?法律や法律用語って回りくどくてわかりづらいですよね。

調べてみたところ「真実であると信じるべき正当な理由や根拠がある」という事らしいです。ポイントは「信じるべき」という部分です。つまり客観的に立証できてなくても良い、本当だろうなと思えるだけの説得力があれば良い、という事なのかな?と思いました。この解釈で合ってるかどうかは読者の皆さんそれぞれでご判断をお願いします。

 

それでも、法廷で「セクハラ行為(判決文ではこの表現になってたようなのでそのまま引用します。セクハラ行為と性加害って印象が全然違うよね)はあった」と認められたのは大きいと思います。

この認定がもしなかったら、今の騒動はもっと違う展開を見せてたかもしれない。世論の見方も違ってたかもしれない。

裁判が終わった後、ジャニーズ側が「民事裁判で真実相当性が認められただけだよ。性加害の事実が立証されたのとは違うんだよ」というのをきちんと広報して周知徹底させていれば。

有耶無耶なまま幕引きさせて、問題を先送りしてなければ。

 

現在進行形の現象だけど、いろんなデマを飛ばされても、酷い誹謗中傷をされても、大抵の芸能人は訴えないですよね。抗議すらしない。

抗議したり裁判を起こす事で、それがまた週刊誌のネタになるし、一部の人しか目にしないデマを逆に拡散させる事になるし、スポンサー企業も嫌がるし。騒ぎ立ててもデメリットの方が遥かに大きい。

訴えて仮に勝訴しても、日本の裁判所が認める賠償額は少ない。今回問題になってる性的被害ですら50〜300万円あたりが相場と知ってビックリした。犯罪の重さ、被害の深刻さに対して少なすぎる。お金で済む問題じゃないけど、被害感情、処罰感情からすれば出来るだけ分取ってやりたいと思うのは当然。今回のように当人が亡くなって直接謝罪が受けられないなら尚更。

弁護士費用その他の経費、時間と労力、精神的負担を考えるとやらない方がマシという判断もあるのかもしれない。

それでもね、やっぱり疑惑はその時にその都度晴らしておかないと、後々大変な事になるんだって今回の事で改めて学んだ。

特に今は、一般人が簡単に情報をやり取りできる時代。昔なら主要メディアを抑えておけば済んだ事が、今はそうはいかない。隠そうとすればするほど情報の真実味が増すし、消せば増えるの法則もある。

時間や手間やお金を惜しんでいい加減に放置しておくのは、これからの時代大きなリスクになる。

リスク管理って費用対効果で考えちゃダメだよね。私たち無名の一般人はともかく、それなりに社会的地位のある人や組織は面倒でもその都度対応していかないと。

 

ジャニーズの今の状況って、自身の怠慢、大手だからという驕り、危機管理能力の欠如が招いた事だと思う。

そして、この期に及んで今もまだ危機管理が全く出来てないと感じる。

 

当人が亡くなっているので事実確認できないと言いながら、安易に謝罪してしまった事

調査と言うと「被害者の証言を疑うのか!セカンド○○○だぞ!」と言われそうで怖くて、あるいは調べたら本当にヤバい話が芋づる式に出て来るかもと恐れたか、どういう理由か定かでないけど、やるべき調査をやらずに「調査チーム」では無く「再発防止チーム」をいきなり立ち上げてしまった事。これ、暗に認めたと取られますよね。

再発防止チームの人選を人任せにしたために、中立公平とは思えない人を座長に据えてしまった事

案の定、中立公平とは思えない一方的な調査報告書と提言を出されてしまった事(当事者の会が要求している基金設立は、再発防止チームの座長・林氏の入れ知恵らしい)

調査報告書の事実認定が重くのしかかり、事務所としても認定せざるを得ない空気を作られてしまった事

 

なんとか穏便に収めよう、これ以上事が大きくならないようにしよう、これ以上イメージ悪くならないようにって思いが強すぎて、何かやるたびに必要もないのに自ら一歩ずつ譲って、耳障りのいい言葉を軽率に発して言質を取られる。

企業の危機管理としてやってはいけない事のオンパレードという気がする。

 

ジャニーズほどの大手事務所でも、危機管理能力が欠如していたばかりにあっという間に転落するんだ。

 

危機管理ってやっぱり大事。